蒸着材料事業

研究開発

稀産金属の薄膜材料開発は、これまで培ってきた無機化成品の研究・開発力と連携しながら、既存製品の品質改善や光学以外の技術分野にも対応できる新規薄膜材料の開発を進めております。 

近年では、撥水・親水膜など機能性薄膜への関心の高まりから、機能性薄膜材料の開発に注力しております。


薄膜材料開発の戦略イメージ

従来から得意としている光学分野向け蒸着材料周辺の技術の拡張と、エレクトロニクス、ライフサイエンス、エネルギー、環境分野へ対応可能な製品開発も視野に入れて、社会に貢献できる次世代材料の開発を進めていきます。

研究開発体制

稀産金属が長年培ってきた各種無機化合物の合成・精製に関する技術力と無機化合物を薄膜材料化する技術を合わせることで、これまでになかった稀産金属独自の製品開発を進めております。




開発品のご紹介

撥水・撥油膜作製用蒸着材材料

KA-SP1 製品概要

弊社の標準タイプの撥油材であるKF-1良品となります。

標準品と比較して、純水接触角と滑り性が向上した薄膜の作製が可能です。

 膜表面に付着した水滴の落ちやすさ(水滴除去性)についても大幅に向上いたしました。

接触角測定(静的接触角)

他社製品と稀産金属の既存製品(KF-1)および開発品を樹脂基板に SiO2を成膜したサンプル上に蒸着して純水接触角の比較を行った結果、開発品(KA-SP1)の接触角が最も良い結果となりました。

・滑落角測定(動的接触角)

撥水膜処理面の水滴除去性の評価を行うため、他社製品を含む撥水蒸着材料で処理した硝子表面の純水滑落角の比較を行いました。

開発品 (KA-SP1)の滑落角が最も良い結果となりました。

・製品材質・形状など

SUS、銅など金属製の容器内に薬品含浸用の鉄・ニッケル等の充填材が入った容器やセラミックス製ペレットに薬品を含浸させたタイプでのご提供が可能です。

膜装置のサイズに合わせた含浸量の調整もご対応させていただきます。



親水膜作製用蒸着材材料

K-RD-X4  開発中

防曇、セルフクリーニング効果が得られる親水膜作製用蒸着材料の開発を進めております。

親水性を持つ薄膜で屈折率はSiO2薄膜と同等、反射防止膜の低屈折率層として使用可能な材料の改良を進めております。



撥水・親水膜の特性向上に向けて

固体表面のぬれ性は化学的因子と構造的因子で決まると言われております。撥水膜を作る蒸着材料は、化学的因子により水を弾く薄膜となっており、さらなる水に対する静的・動的接触角の向上を図るには構造的因子も考慮する必要があります。

化学的因子 ⇒ 親水基(水酸基、リン酸基、スルフォニル基など)

         疎水基(フルオロカーボン基、メチル基など)

構造的因子 ⇒ フラクタル形状、凹凸形状、花弁状など

固体表面に構造的因子を導入して撥水性を高める取り組みは、薄膜を利用する方法と基材表面を加工する方法で検討が進められております。

弊社は、蒸着材料を取り扱うメーカーなので蒸着膜を利用して固体表面に構造的因子を導入することを目指しています。




抗菌・防かび膜作製用蒸着材材料

SiO2(AG) 製品概要

SiO2など通常の蒸着材料にAg系の無機抗菌剤を添加した蒸着材料です。
ベース
材料に選択した光学薄膜の特性に抗菌性と防かび性を付与することができます。

選択する無機抗菌剤の種類や添加量、ベース材料とした物質によって各種タイプの抗菌蒸着材料のご提供が可能です。

抗菌の定義

抗菌

製品の表面上における細菌の増殖を抑制すること

滅菌

微生物を完全に死滅させること

殺菌

細菌やウイルスなどの微生物を死滅させること

消毒

微生物のうち病原性のあるもの全て殺滅・除去してしまうこと

除菌

ある物質又は限られた空間より微生物を除去すること



◇抗菌効果の評価  JIS Z 2801ISO22196

抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」に関する日本工業規格

2007年にISO化されており、ISO22196と同等の試験内容。黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌の代表)大腸菌(グラム陰性菌の代表)2種の菌で試験が行われる。



・抗菌薄膜の抗菌力試験結果

SiO2AG)で作製した蒸着膜を付けた基板では、大腸菌・黄色ぶどう球菌ともに生菌数が検出限界以下となり、抗菌活性値が4以上となることを確認しました

◇抗菌活性値(Antibacterial activity value)

 R= log(B/C)    

 

 R:抗菌活性値 

 B:無加工試験片の24時間後の生菌数の平均値(個)

 C:抗菌加工試験片の24時間後の生菌数の平均値(個)

抗菌活性値2.0 以上(99%以上の死滅率)で抗菌効果有りと判断されます。


・抗菌薄膜のかび抵抗性試験

薄膜作製に使用した蒸着材料

1).ZnO

僅かに抗菌性を示す薄膜となる

2). SiO2(AG-H

抗菌材添加SiO2ベースの蒸着材料

濾紙を基材として抗菌膜蒸着

膜厚100nm成膜したサンプルを作製

  ⇒ 濾紙 かびが生えやすいため基材として選定

かび抵抗性試験結果

かび抵抗性試験開始から2週間の時点でSiO2(AG)の蒸着膜を成膜した濾紙には、かびの発育は認められなかった。

試験は「JIS Z 29112010 7 (繊維製品の試験)」を参考に以下、5種のかびを用いて実施いたしました。


◇かびの発育判定

簡易的に以下のような基準で行っております。

-        :かびの発育は認められなかった

±        :かびの発育の有無を肉眼で容易に確認できなかった
+       
:かびの発育が認められた。
++    
:良好なかびの発育が認められた
+++ 
:激しいかびの発育が認められた

抗菌・かび抵抗性試験について

弊社の抗菌蒸着材料を使用して作製した薄膜に対する抗菌評価を開発段階では無償で実施することができます。 

弊社の協力会社様へ評価をお願いすることになるため結果が得られるまで、お時間が必要になる場合があります。



その他

稀産金属では、蒸着材料の開発のために取得したデータや真空・薄膜・分析関連の論文・総説などから独自に集積した薄膜・材料に関するデータを所有しております。また、学会や研究会等において、薄膜やその分析技術に関する講演なども積極的に行って参りました。
これら集積したデータや講演で使用した資料についても、弊社のユーザー様には問題の無い範囲でご提供させていただきます。
以下に過去に行った講演等のリストと使用したデータの一部を記載いたしました。 是非、お問い合わせください。


●稀産金属の対外的な情報発信

翻訳書     光学薄膜原論 (Thin Film Optical Filters, Fourth Edition  著者: H. Angus Macleod)  監訳:神戸芸術工科大学 小倉繁太郎  訳 東海光学株式会社・他

講演    「各種光学薄膜の物性評価と機能性薄膜材料の開発」2017年度 第4回 光学薄膜研究会 (20181) 

講演    「真空蒸着で作製した抗菌・防かび薄膜の各種特性評価」真空展2018  光学薄膜ゾーン セミナー(20189月)

講演    光学薄膜の不具合解析と薄膜材料開発における表面分析装置の適用事例」  37回 JEOL EPMA表面分析ユーザーズミーティング(東京・大阪201810月)

講演      機能性薄膜材料の開発と特性評価 真空展2019 光学薄膜研究会セミナー(20199)

学会発表  「真空蒸着法を用いた抗菌薄膜の作製」 第64回応用物理学会春季学術講演会 (20173)

●講演等で使用したデータ抜粋

●各種成膜手法と膜物質で作製した薄膜の硬度・弾性率

参考文献


●抗菌蒸着材料で作製した抗菌薄膜の抗菌力テスト


ご注意 文献は著作権法により保護されておりますので当社からの参考論文の配布、当Webサイトからのダウンロードはできません。 各学会、出版社などにお問い合わせください。

ページトップへ戻る

稀産金属にできること

ご依頼いただける内容

・蒸着材料の選定

所望の光学特性や機能性についてご連絡ください。

既存の弊社製品、もしくは市販されている蒸着材料の中から最適な製品をご紹介いたします。


・試作対応

コートメーカー様指定の物質や混合物、また狙っている薄膜の特性(高硬度・高密着性・各種光学特性)をお話いただき、蒸着材料として

試作できるものであれば対応いたします。



・蒸着テスト

弊社所有の真空蒸着装置で成膜可能な物質であれば対応できます。

ただし、あくまで蒸着材料の評価のための試験となるため成膜する基材の数量が多い場合、光学特性など精密な仕様を満たさなければならない案件は、お断りすることがあります。


薄膜の分析

レンズ外観不良の原因調査、膜物質の特定、撥水性の評価など社内の分析・評価装置で対応可能なものについてはご対応いたします。


ご依頼いただきました蒸着材料の試作に対して、ご要望があれば社内装置での蒸着テストを行い、薄膜についても簡易評価を実施して、簡単なレポートを提出させていただきます。


弊社の装置で成膜できない材料、取扱いの困難な材料の場合はお断りする場合もございます。



薄膜材料への取り組み

蒸着材料の試作・製造技術や設備だけでなく、真空蒸着法や薄膜に関係する技術・設備・情報を所有しております。

ここでは、弊社がお客様に対してご提供できる各種情報やデータについてご紹介いたします。


蒸着材料関連で使用する装置

製品のテストや試作品で作製した薄膜の特性を評価する装置の一部を示しました。測定が困難であるサンプルや時間がかかるもの、取扱いの難しい物質や形状の薄膜・蒸着材料以外で、サンプルの構成や解決したい問題を開示していただける場合には、下記の設備で可能な限りご協力させていただきます。


真空蒸着装置(φ1100
蒸発源:電子ビーム/抵抗加熱


紫外-可視分光光度計


自動接触角測定装置

XRD

SEM-EDS

EDX


分析装置の使用例

ここでは各種評価装置と、それらを用いて行った評価事例を簡単にご紹介いたします。

ここに示した実施例の詳細や、これら以外の測定例、またこれらの装置を用いて何ができるかなどについてはお問い合わせいただければ回答可能な範囲でご報告させていただきます。


・真空蒸着装置

 蒸着材料製品の検査、試作品の評価

・光学顕微鏡

 ⇒薄膜の欠陥形状・サイズ確認


・摺動装置

 ⇒薄膜の耐摩耗性評価

・接触角測定装置

 ⇒撥水・撥油・親水膜の特性評価


紫外可視近赤外分光光度計

 ⇒薄膜・基材の光学特性(透過率・反射率)の測定

・走査電子顕微鏡(元素分析装置付き)

 ⇒蒸着材料の焼結の程度・組成確認、薄膜の外観不良の原因特定


・エネルギー分散型蛍光X線分析装置

 ⇒蒸着材料の組成確認、薄膜の膜厚や組成の確認

X線回折装置

 ⇒蒸着材料の結晶構造確認、薄膜の表面粗さ・密度の評価



レンズ外観不良の解析例 

コートメーカー様からご依頼のあった光学フィルターの外観不良の解析例をご紹介いたします。弊社の製品をご使用いただいていない場合でも不具合の内容や使用した蒸着材料の種類や成膜条件を開示いただければ、問題解決に向けてご協力することができます。


・反射防止膜 外観不良  MgF2のスプラッシュが付着



・多層膜  SiO2材料や高屈折率材料の不具合


蒸着材料起因の外観不良に関しては、異物の形状・サイズ・問題となっている物質の特定まで可能な限りご協力いたします。


その他、下記のような問題もご相談ください

・膜物質の選定(外観不良対策)


・プラスチック基板との密着力向上


・膜応力の低減


・各種光学薄膜の硬度・弾性率情報


・成膜時のスプラッシュ対策


・蒸着物質に対応したライナーの材質



蒸着材料の面から各種情報をご提供


ページトップへ戻る

Q & A

お客様から寄せられる良くあるご質問とその回答を記載いたしました。

Q.1 ホームページに載っていない製品が欲しいのですが?

・ホームページやカタログではすべての製品を紹介できておりません。お問合せください

・弊社で取り扱いの無い蒸着材料も、ご相談いただければ試作・製造いたします。

・既存品の改良や、お客様の狙っている薄膜特性を実現する蒸着材料のご紹介、各種試作にご対応いたします。

Q.2 蒸着材料の形状・サイズの指定は可能ですか?

・ペレットの場合は所有している金型で対応できる範囲でご対応いたします。

・撥水・撥油材に関しては、成膜装置のサイズに合わせた有効成分の含浸量の最適化までご協力させていただきます。

Q.3 他社さんの蒸着材料で発生した不具合の原因調査に協力していただけますか? 

不具合の内容次第では、ご対応いたします。薄膜の外観不良や膜剥がれの問題などご相談ください。

Q.4 基材の材質にあった蒸着材料を教えていただけますか?

弊社のこれまでの経験と所有している各種情報の中から、わかる範囲でご報告させていただきます。

Q.5 蒸着材料の成膜条件を教えてください

主要材料のデータはご提供できます。 他、ご依頼いただいた試作品のおおよその蒸着条件や光学特性などもご提供可能です。